はじめに
この数年、新中野工業では精白米の割れに関しての調査を実施してきた。その結果、従来の枯らし法では枯らし中に白米の割れ発生が進むこととバラツキがあることが確認された。一方で白米保管を密閉状態にした場合には白米の割れ発生が少なく洗米・浸漬時の割れも軽減されることが確認された。精米後の「枯らし」について調査した結果を実例を上げて紹介する。精白米枯らし中の調査
枯らし日数と白米の割れの関係
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精米後、白米水分の増加とともに2日目までに白米胴割れが進み5日目以降、砕米の発生が進んだ。 白米胴割れ率と浸漬した時の白米割れ率は同様の推移をした。 16日目以降、白米水分は一定となり、枯らし44日目までは、白米の胴割率も砕米の発生率も増加しなかった。 |
保管条件の違いによる調査
1.パレットへの積み方による違い
隙間の有る無しによる白米水分、砕米率、胴割率の変化の違いを表に示した。
2.白米袋の中の場所での違い
一つの白米袋の中の場所の違いによる白米水分と胴割率の変化を調べた。
精米後14日目では外側部分では白米水分が13.3%、内側部分では白米水分が10.7%となった。 白米胴割率は外側部分で65%、内側部分で38%となり、その差は27%であった。 |
3.袋に入れる白米重量による違い
一つの白米袋に入れる白米重量の違いによる白米水分の変化を調べた。
枯らし35日目、49日目でそれぞれ約1%の差が付いており、10kg入りの方が早く水分が戻った。
4.精米直後に冷却した時の影響
精米直後に冷却した時の影響 |
冷蔵庫で枯らした時の状況 |
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砕米発生率は1.5%高くなったが、白米胴割れ率は6%減少した。
冷蔵庫に白米を保管した場合、枯らし11日目で白米水分が15%となり、白米胴割れ率も64%と高くなった。
5.精米直後に密封(外気と遮断)した場合
6.密封紙袋の材質の違い
以下の密封紙袋を用いて、材質の違いによる白米水分と胴割率への影響を調べた。
①通常紙袋、②ラミネート加工袋、③ビニール内装袋
<ラミネート加工袋>は、<ビニール内装袋>より透水性がある。ゆっくりと水分を戻した時には白米割れ率が増えないのではないかと考え調べてみた。
白米水分は紙袋では、枯らし1日目から増加したが、ラミネート袋及びビニール袋では増加率が小さくなった。 | |
白米胴割率は紙袋では、枯らし1日目から増加したが、ラミネート袋及びビニール袋では増加率が小さくなった。 但し、ラミネート袋で白米水分を徐々に戻しても白米胴割れ率は高くなった。 |
密閉包装の効果
実際に密閉袋で白米枯らしを実施した蔵へのアンケート調査結果において、次のような傾向がみられた。
・従来の方法より密閉包装は浸漬時の米の割れは明らかに少ない ・浸漬時の吸水のバラツキが以前より無くなった ・浸漬吸水率を2~8%高めにした ・浸漬時間を1~3分長めにした ・浸漬米の付着水のキレが良くなった ・50%より高精白で効果が顕著であった |
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密閉包装で枯らした白米の浸漬試験
浸漬水温が5℃、8℃、15℃の時の紙袋と密閉包装の浸漬割れ率を浸漬時間経過で調べてみた。浸漬時間別浸漬割れ率(浸漬水温・包装別) |
浸漬時間が16分までにおいて、浸漬水温に関らず密閉包装のものは通常の紙袋に比べて、浸漬割れ率が下回っていた。 同じ包装の場合は浸漬水温が低いほうが浸漬割れ率は小さいようだ。 |
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浸漬時間別の白米水分量に関する検証
浸漬時間別浸漬吸水率(浸漬水温・包装別) |
浸漬吸水率は浸漬水温が8℃より15℃の方が高く推移した。20分間までだと密閉包装では、ほぼ直線的に吸水率が増加していた。 紙袋では吸水開始初期は高かったが15分以降は吸水率の上昇は少し鈍くなり、同じ水温の密閉包装より下回った。 |
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浸漬吸水率と含水率
浸漬時間別 浸漬吸水率 |
浸漬時間別 白米含水率 |
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浸漬時間別 浸漬吸水率 |
浸漬時間別 白米含水率 |
紙袋で適度な浸漬吸水率にする時、密閉包装では同じ浸漬吸水率にするには浸漬時間が長くなる。
紙袋と同じ含水率にするには、密閉包装は更に浸漬時間を長く取る必要がある。
まとめ
『密閉包装枯らし』について・精米直後の精白米を密閉包装とすると、白米水分が戻らずに白米胴割れが少なく、浸漬時の割れも少ない |
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